2009/02/28

PARSAXのレッスン

服部吉之先生にお願いして、F.フェラン「PARSAX」のレッスンを受けてきた。服部先生は、ファブリス・モレティ氏、服部真理子さんとともに、かつてこの作品を国内初演されたのだ。

昨年、サミュエル・バーバー「思い出」のレッスンのために鎌倉のご自宅に伺って以来、かなりご無沙汰だったなあ。曲自体も短いし、それほど長い時間をみていただいたわけではなかったのだが、相変わらずの充実したレッスンだった。楽しかったー。以下、メモメモ。

・第1楽章:音の密度、最初8小節のパワー(生き生きと)、アクセンティッシモの扱い、スラーの終わりの八分音符は短く、恐れずに勇気を持って吹く、60からはドライに
・第2楽章:テンポ設定→盛り上がる部分、静かな部分とリンク、最後の部分
・第3楽章:メロディで引っ掛ける部分
・その他:立奏がかっこいい、服部先生1st&モレティ氏2nd→ジャンケンで決めたらしい、最初の音の発音を変える

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「今年もまたなんか書かない?」と言われたので、サクソフォーン協会報用に、まとまった記事を一つ作るかもしれません。既に考えているネタはいくつかあるのだが、何にしようかなー。締め切りは5月末か、よし。

2009/02/27

リエゾンSE第1回定期演奏会

【リエゾン・サクソフォン・アンサンブル第1回定期演奏会】
出演:家田厚志(cond.)、野原みどり(pf.)、野原武伸(sn.sax.)、成田徹、持田崇(以上s.sax.)、貝沼拓実、佐藤梓、江原あずさ、伊藤あさぎ(a.sax.)、大栗司麻、島田和音、鈴木崇弘(以上t.sax.)、小山弦太郎、鈴木啓人、原博巳(以上b.sax.)、藤木貴行(bs.sax.)
日時:2009年2月27日(金曜)19:00開演
会場:浜離宮朝日ホール
プログラム:
W.A.モーツァルト - アイネ・クライネ・ナハトムジーク
E.グリーグ - ピアノ協奏曲(独奏:野原みどり)
M.ラヴェル - マ・メール・ロワ
E.グリーグ - 組曲"ホルベアの時代より"
~アンコール~
P.I.チャイコフスキー - "くるみ割り人形"よりトレパック

開演20分前にホールに入ったときは、なんだか「サックスの客」って感じではなくて、ちょっとご年配の音楽ファンというような趣の方が多く目についた。開演が近づくにつれ、ああ、いつもの方々だ~みたいな感じになっていったのだが。客席では、MJさんと並んで聴いた。

リエゾンSE。四重奏 or サックスオーケストラという編成に落ち着いてしまうサックス界にあって、珍しい編成のアンサンブルである。主宰は野原武伸氏で、総出演で指揮者つきのSnSSAAAATTTBBBBsという編成。チラシを見る限りは10重奏くらいだったと思ったのだが、どうやら14重奏くらいまでを想定しているということなのだろうか。チラシではテナーだった貝沼氏がアルト(!)のトップに移っていたり、なぜか伊藤あさぎさん(!)が乗っていたりと、想像していたのと少し違った。mckenさんが日記に書いていて思い出したのだが、そういえばリヨン音楽院のサクソフォンアンサンブルも似たような編成(指揮者つきの13重奏)だったはずだ。

演奏なのだが、このプログラム…「アイネ・クライネ」「グリーグのピアノ協奏曲」「マ・メール」「ホルベア」を並んで聴いてみると、もう野原みどりさんの圧勝って感じだ。スケール、オーラ、音色、フレージング、テクニックの全てにおいて、格が違う、どころか世界が、そして次元が違う、というほどのものでした。野原みどりさんが独奏を務めたグリーグの「ピアノ協奏曲」の曲中には、サクソフォンとピアノが絡む部分が何箇所かあるのだが、サックスだけ取り出してみると上手いのに、比べてみるとその差は歴然…。もの凄いピアニストであることは、良く分かっていたはずなのだが、こうして改めて聴く独奏は、想像をはるかに超えたものだった。サクソフォンを基準に考えてしまう自分の想像が、いかに貧弱であるか、ということを思い知らされた。

近年、野原みどりさんが共演するサクソフォンの演奏家といえば、たとえばドゥラングル教授とか原博巳さんといったところになるが、そういった世界トップレベルの人でなければ、このピアニストとはアンサンブルで等価な位置に立てないのではないかとも思った。あー…、サックスってやはりクラシック音楽の大海の中では、ごくごくマイナーな分野なのだなあ、と再認識。

まあ、そんなわけで、今も耳に残るのは野原みどりさんのピアノなのだが、さすがにそれだけではあんまりなので、いくつか感想を。指揮者を立ててのアンサンブルは、これはどうなるかと期待していたのだが、アンサンブルとしての方向性はやはり良い傾向が見られる。緩徐楽章でのフレーズの持続など、指揮者なしのアンサンブルでは絶対に達成できない演奏だ。また、弦楽器のような音の扱い方の、ベクトル一致は、これもオーケストラ指揮者ならではのものではないだろうか。そういえば、指揮者用譜面台のスコアはオーケストラのものを使用していたようだ(ホルベアでは、なんとミニアチュアスコアで振っていて、とても可笑しかった)。

サクソフォン陣営では、アルトのトップであった貝沼氏による、全体のアンサンブルの引き締めが印象深い。バスサクソフォンを演奏していた藤木氏も、理想的な発音と音色で個人的に好印象。さらに、「マ・メール・ロワ」で出現する大栗司麻さんや伊藤あさぎさんの独奏と、「ホルベア」での原さんの独奏がアンサンブルに華を添えていた。2ndや3rdでも、やはり聴こえる部分が印象的に聴こえてくるのは、さすがというべきか。「ピアノ協奏曲」以外では、最後に演奏された「ホルベア」が良かった。というか、最もコンパクトな響きで、やはりこの曲は管楽器と相性が良いことを再確認した次第。

なんか、個人的にいろいろとショックを受けたりと、考えることの多い演奏会ではあったが、リエゾンSEは、これまでになかった方向性の団体として、大変注目すべきものだと思う。今後どのような方向に進んでいくのか、楽しみにしたい。

2009/02/26

ご紹介:ボクノオンガク

このブログdiary.kuri_saxoでは、いわゆる「クラシックの名曲」についてはあまり扱っていない。自分自身がCDを持っておらず、あまり聴かないということもあるし、何よりクラシックの名曲について語るには、語彙が貧弱すぎるからだ。すでに語りつくされたものを再度紹介しなおすことは、なかなか困難が伴う。

で、今回ご紹介するブログは、大学の吹奏楽団の後輩のブログなのであるが、そのクラシックの名曲を一記事に一つずつ紹介しているというもの。

ボクノオンガク

すでに40ほどの記事がアップされているが、一つ一つのエントリーが秀逸で、どの記事を読んでも、「この曲聴きたい!」とか、「もう一回聴いてみよう!」と思うこと幾度。しっかり聴いたことのない曲の記事も良いけど、個人的には知っている曲の記事が好きですね。そんな聴き方があったんだ!みたいな。ある曲の魅力を独自の観点から引き出し、文章として上手く表現していく様は、見事と言うほかない。

そんな私は、「ラ・ヴァルス」の記事を読みながらクリュイタンス×ソシエテのラヴェル管弦楽曲全集を聴いているところ。目覚めにラヴェル、なんとも贅沢…。

2009/02/24

Leduc Price List

これは、イィンドジフ・フェルド「サクソフォン四重奏曲」の楽譜のトビラ。この表紙は、サクソフォンをやっている方にはおなじみの、Alphonese Leduc社刊のものである。この、右下に記載されている「Réf: CD」の刻印が、楽譜の値段の指標になっている…という話は、以前書いた。Aから始まり、A→B→C→…→AA→AB→AC→…という風に、どんどんと値段が上がっていく。明確に「~ユーロ」「~ドル」と書いてしまうと、価値の変動に対応しきれない部分があるということなのだろう。

そんなわけで、アルファベットに応じて値段が決まっているのだが、対応表の一例を入手した。2009年1月のやつだそうです。たぶんこれは、アメリカの卸売業者であるRobert King, Inc.が輸入して、アメリカ国内で売るときの値段だと思う。これを見るとわかるとおり、単純にアルファベットが大きければ大きいほど値段が高いというわけではなく、何度か折り返しがあるようだ。面白いですね。

御用とお急ぎでない方は、ぜひお手元のAlphonse Leduc社刊の楽譜と、この対応表を見比べてみてください。

2009/02/23

Vent de Sax

Alphonse Leduc、というかRobert King, Inc.からダイレクトメールが届いて、何だろうなと思っていたら、新しい楽譜シリーズ発売のお知らせだった。「Vent de Sax」という、フランスの作曲家の新作を中心に取り上げたコレクション。ちょっと解説を読んでみよう。

これは、すべてのレベルのサクソフォン奏者のためにリリースされた、楽譜コレクションです。「Vent de Sax」では様々な作曲家の多様な作品を取り上げましたが、それらに一貫して言えるのは、今日サックス界で注目の的となっているタイプの音楽だ、ということです。/本コレクションは、まさにフランス音楽界のポートレイトだと言って良いでしょう。コンサート、フェスティバル、テレビなどで聴かれ、内容もセリーから、ジャズ、スペクトラル、ミュージック・コンクレートまで様々です。もちろん、即興を含むものもあります。/表紙の色が、楽譜のレベルを表しています(易しい←黄、青、赤、黒→難しい)。
ナンシー地方音楽院教授 Claude Georgel

ということで、新作の楽譜集なのだが、内容がかなり面白そうだ。フラグシップとなる編成は、「Saxophone et dispositif électroacoustique (avec CD)」ということで、つまりサクソフォンとテープまたはエレクトロニクスのための作品なのだ!以下、初期リリースのリストである。

Claude Barthélémy
- Le Dos des caïmans
- Gazebo
- Okawati's
- Ubud
Tomás Gubitsch
- ...And yet
- Des bords déments
- Clair-obscur
- Pour mémoire...
Jean Claude Risset
- Diptère
- Distyle
- Reprises
- Rumeur
- Saxatile
- Saxtractor
François Rossé
- Kanente
- Prélude à Kanente

ここまでが、すべてサクソフォンとエレクトロニクスのための作品。トーマス・ギュビッチという作曲家の名前は聴いたことがないが、プログレも演奏してしまうギタリストしての顔も持っているそうで、公式ページからたどれる作品は、なかなか面白い。これは、期待できそうだ。他の編成の作品は、次の通り。

François Rossé
- Jonction (Saxophone and Piano)
Claude Georgel
- Aiguille rouge (Saxophone Solo)
- Rivage pâle (Saxophone Solo)
Betsy Jolas
- Allô (Saxophone Duo)
- Oh là (Saxophone Duo)
- Scat (Saxophone Duo)
- Walking ground (Saxophone Duo)
Georges Aperghis
- Jeu à quatre (Saxophone Quartet)
Jean Louis Chautemps
- Carré de quatuors (Saxophone Quartet)

四重奏としてリリースされた作品の作曲者は、二人とも名前を知らない…。ベッツィー・ヨラスは無伴奏テナーのための「エピソード第4番」等で有名ですね。フランソワ・ロセは言わずもがな。

さて、この「Vent de Sax」だが、標準編成の作品群ももちろんだが、サクソフォンとエレクトロニクスという編成になるCD付きの楽譜が、とにかく面白そうだ。今まで、こういったサクソフォンとエレクトロニクスの作品を演奏しようとするときは、楽譜は大手出版社から出ているケースが多いものの、演奏に必要な肝心のエレクトロニクスパートの入手に関しては、直接作曲家にコンタクトしなければならない場合がほとんどだった。この状況は、サクソフォンとエレクトロニクスの作品の演奏の敷居を高め、ちょっと興味のある奏者がエレクトロニクス作品に取り組む際のハードルを上げていた。

だが今回リリースされたコレクションは、そういった状況を打破する可能性がある。なんせ、最大手と言っても過言ではないAlphonse Leduc社からの出版であり、しかも楽譜にエレクトロニクスパートが添付されているのだ!なんと、すでにアクタス等でも取り扱いを開始しているようである。買って、練習して、とりあえずラジカセでエレクトロニクスパートをかければ演奏できてしまう、というお手軽さが良い。もしかしたら、作品の中にはマイクやコンピュータが必要なのもあるかもしれないが…。

あとはあれだな、実際に作品が「面白い」かどうかということ、そして、できればこのコレクションを収めたCDをリリースしてほしい、というところが課題ではないだろうか。これらのリストの作品としての面白さは、このシリーズに作品が増えるかどうかに関わってくると思うし、CDは興味を持つきっかけとしての意味が大きくなるのだろう。

2009/02/22

【ご案内】Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.3

ぼちぼち近づいてきたので、告知しておきます。おそらく、つくばでは最後の演奏会となります。今回は、マスランカの傑作「レシテーション・ブック」をメインに据えています。また、フルート奏者の渡瀬英彦先生をお迎えし、マルチェロの協奏曲を演奏いたします。

…なんか3/14て、各地でいろいろと演奏会が重なっているようですが、ぜひお越しください!下に掲載したチラシは、クリックして拡大できます。

【Tsukuba Saxophone Quartet - SAXOPHONE CONCERT Vol.3】
日時:2009年3月14日(土)
会場:つくば市アルスホール
開場19:15 開演19:30
入場無料
客演:渡瀬英彦(フルート奏者)
G.ロッシーニ - チェロとコントラバスのための二重奏曲
M.ブンス - ウォーターウィングス(日本初演)
A.マルチェロ/波多江史朗 - 協奏曲(独奏:渡瀬英彦)
D.マスランカ - レシテーション・ブック 他
問い合わせ:
http://tsukubasaxophone.blog51.fc2.com/
kuri_saxo@yahoo.co.jp

2009/02/21

第16回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会

去年に引き続き、伺ったのは2度目。当日券もほとんど出ないほどの満員で、客席は中高生、音大生、プロ奏者、といったところが大半を占める。私の個人的なお知り合いの方も、何人もいらしていた。

【第16回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:東京藝大サクソフォーン専攻生
日時:2008年2月20日(金)18:30開演
場所:川口総合文化センターリリア音楽ホール
プログラム:
F.プーランク - トリオ(sax:佐藤琴美、須永和宏、pf:吉武優)
C.パスカル - 四重奏曲(sax:塩入幸恵、横山美優、三浦夢子、本堂誠)
松岡大[示右] - トゥリアエズ(sax:石橋梓、鈴木崇弘、高橋陽香、田中拓也、福田享、丸場慶人)
H.トマジ/柏原卓之 - バラード(sax solo:角口圭都、cond:池上政人、sax orch:高橋陽香、石橋梓、寺田麗美、細川紘希、福田享、横山美優、鈴木崇弘、須永和宏、三浦夢子、丸場慶人、田中拓也、本堂誠、harp:逸見美帆子)
~休憩~
K.シュトックハウゼン - 少年のデュエット(sax:佐藤淳一、田村哲)
N.ブルグミュラー - 二重奏曲(sax:依藤大樹、pf:城綾乃)
G.リゲティ - 6つのバガテル(sax:伊藤あさぎ、細川紘希、寺田麗美、大石俊太郎)
M.ラヴェル/ミ・ベモルSE - クープランの墓(cond:池上政人、sax:総出演)
~アンコール~
J.マティシア - 悪魔のラグ Devil's Rag

理由はよくわからないのだが、去年よりも印象深かったなー。客席の沸き方も明らかに違うし、一つ一つのグループが上手いだけではなくそれぞれ個性的で、それぞれの演奏者の吹き方や衣装や表情を、一日経った今でもはっきりと思い出すことができるほどだ。気取らない、着飾らない演奏で、奏者の「地」がより強く出たのかな?聴いていた位置のせいもあるかも知れない(今回は前方中央ブロックの最後列、前回はけっこう後ろのほう)。

プーランク、ソプラノの音色もテナーの音色もホレボレしてしまうほどだし、2本の楽器がユニゾンで奏でる部分の、幸福感に満ち溢れた感じとか、いいなあ。あ、佐藤琴美さんの衣装が非常にかわいらしかったです(笑)。女性陣は、衣装や髪型に気合が入っていらっしゃって、どなたも素敵でした。パスカル、比較的若いメンバーで固められた四重奏で、ああ、まだ入学して1年なんだなあ、というちょっと垢抜けない感じのサウンド。それでも、テクニカルな面は余裕でクリアしており、さすがだ。ところどころ出現する和声とか、ビート感を上手くコントロールしていく様が見事だった。第1楽章が印象に残っている。

松岡大[示右(←しめすへんに、みぎ)]氏の作曲による「トゥリアエズ」。ソプラノとバリトンがそれぞれ2本ずつ、アルトとテナーがそれぞれ1本という編成の、3つの楽章から成る作品。実に面白い作品だった!特殊奏法を随所に使用しながら、極端にユーモラスな音世界を表現しており、これは普通のサクソフォンのアンサンブルとして聴いてみたい/演奏してみたいと思える。演奏も、なんだか楽譜そのまんまのユーモアに溢れた、完全に乗り切ったプレイで、奏者の作品に対する共感度が高いのだろうなと思った。委嘱が上手くいった好例だったと思う。

トマジ。真っ赤なドレスで現れた角口圭都さん、柏原卓之氏の編曲と池上政人氏のタクト、そしてSn.からBs.までの学部生によるサックスオケ(ハープ入り)という、最強のバックアップを得て、ある時は一音一音を慈しむように吹き、またある時はのびやかにフレーズを歌ってゆく姿が、とても印象的だった。角口さんの、演奏できる幸せをかみしめているような音には、なんというか、理屈抜きの感動を味わいました。一緒に連れ立って行った後輩たちも、とても驚いていたようだ。それにしても、こうして聴いてみると「バラード」って、実にロマンティックな曲だ。

休憩をはさんで、シュトックハウゼン。川口リリアの音楽ホールは、ステージ上方にパイプオルガン奏者のための高台があるのだが、なんとその場所を使用して演奏された!真っ白な衣装で登場した2人に、スミレ色のライトが当たった状態で演奏される「少年のデュエット」。ちょっとトリップしそうになりました。それにしても、あんな離れた位置から、どうやって合わせているんだろうか。意外とアンサンブルしやすいのかな?曲が終わった後の、客席のざわつきが面白かった。

ブルグミュラーは、ピアノの教則本でも有名なヨハン・ブルグミュラーの弟、ノルベルト・ブルグミュラーの手によるクラリネットとピアノのための作品。ロマン派音楽の典型な、甘いメロディに満ち溢れた作品で…いやあ、こんな作品があるんだなあ。ピアノとサクソフォンの、アンサンブルの妙を楽しむことができた。

「6つのバガテル」…出版されているのか!という驚き。ハバネラSQバージョンではなく、Schott社から出版されているのだと。へえ~。第1楽章こそ「?」という感じだったのだが、楽章が進むにつれてぐっと惹き込まれてきて、第4~5楽章あたりから最後にかけてはまさに圧巻だった。そもそも、響きのコントロールの仕方が根本的に違うのだろうか。場面々々によって、会場に響く音がまったく違って聴こえてくるのだ。面白いな。

で、最後は「クープランの墓」ですよ。自分たちでもやったことがあって、この曲のこの編曲の難しさは重々承知しているため、よけいに驚いた。こりゃすごいや。「プレリュード」とか、なんであんな風に軽々と吹けるのだろうか(苦笑)。いやはや~。アンコールは、マティシアの、原曲はピアノとサックスのための作品を、そのままオーケストラの編成で演奏して終演(最後に盛大なオチがついていた笑)。いやー、面白かった。終演後は後輩たちと東京に出て、ラーメンをおごらされ(?)、そのまま帰途についた。

東京フラフラ

東京をフラフラと歩き回りました。下倉楽器→ディスクユニオン→アカデミアミュージック→川口リリア→ラーメン屋さん。ドルチェにも寄ろうと思ったのだが、リリアの東京芸大サックス科定期に間に合わなそうだったので、やめた(のだが、今CDのセール中だとか…早く言ってくれ!)。

下倉では、リードを購入。アカデミアでは、マルチェロのスコアを物色…手に入らず、いったいどこにいけば手に入るのだろうか(海外発注するしかないのかな)。芸大のサックス科定期は、とっても良かった!どの演奏も、レベルが高いだけにとどまらず、それぞれの団体が個性的で、去年の定期よりもずっと面白かったような気がする。こちらに関しては、また明日しっかりと感想を書く予定。ラーメン屋さんは、適当に入った割にはけっこうおいしかった。

眠いので寝ます。ぐー。

2009/02/19

最近のKenneth Tse氏

ここ数ヶ月Twitterを使っていたのだが、どうもメリットを感じないのでアカウントを削除した。mixiも、エコーをOFFにした。便利なサービスは多いのだが、ここらで少し整頓をしないとな。

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アメリカを代表するサクソフォン奏者の一人、ケネス・チェ Kenneth TSE氏の最新アルバムが発売となった。今回は、なんと須川展也さんとのデュオCD!これは買うしかないだろう。チェ氏のウェブページのトップに載っている2人の写真が、素敵だ。

タイトルは、「Stellar Saxes(Crystal Records CD359)」。これがジャケットだそうだが、こちらもお茶目なサックス吹きが2人って感じでなんか良いですね。Crystal RecordsのCDは、チェ氏のファーストアルバムのジャケットがあまりにもアレな感じだったもので(笑)ちょっとびっくりしたのだが、今回はなかなか良い。肝心の内容だが、次の通り。このリンク先からも、詳細を辿ることができる。

長生淳 - Paganini Lost
P.ヒンデミット - コンチェルトシュトゥック
加藤昌則 - オリエンタル
G.ラクール - デュオのための組曲
長生淳 - 天頂の恋
V.モロスコ - デュオのための6つの現代的エチュード

まず注目すべきは、一部サックス吹きにとっては待望となる「天頂の恋」の録音。今まで音源がなかったため、これのために欲しい、という方も多いだろうなあ。ヒンデミットは、最近になってCD増えすぎっす(苦笑)。長生氏の作品、そして、加藤氏の作品も、試聴する限りではかなり面白そうだ。もちろん、ラクール、そしてモロスコも大変気になっているところ。

購入は、チェ氏公式ページのDiscographyのコーナーからどうぞ。っていうか、今のところはそれぐらいしか入手方法がなさそうなのだが、日本国内ではどうやって流通させるつもりなのだろうか。

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あと、今さらではあるが、前回の世界サクソフォンコングレスにおけるチェ氏のライヴ録音が、Media LIVE!のコーナーにアップされていた。David DeBoor Canfieldという作曲家の「Martyrs for the Faith」という名前の、アルトサクソフォンと吹奏楽のための協奏曲。「Polycarp」「Gaspard de Coligny」「Jim Elliott」という3つの楽章から成る作品なのだが、これがまた面白い曲なのだ!

あれですね、わかりやすいメロディやコラールの後ろに、走句が駆け巡るってやつに弱いですね、自分は。第1楽章や第2楽章がまさにそんな感じなのである。そして、第3楽章はノリノリの7/8拍子!楽しくないわけがない。共演は、スロヴェニアの陸軍バンドで、指揮はなんとベルギーサックス界の大御所、アラン・クレパン Alain Crepin氏だ!チェ氏のサックスも、冴えまくっている。ちょっと長いのだが、かなりの名演だと思うので、ぜひ聴いてみていただきたい。

2009/02/18

Doug O'Connor plays Mantovani

ジャン=マリー・ロンデックスの入賞者としても有名な、アメリカのサクソフォン奏者、ダグラス・オコナー Doug O'Connorの最新の演奏映像が、YouTubeにアップされていた。オコナー氏はイーストマン音楽院に在学中なのだが、この演奏はDoctoral Degree Recitalということで、つまり博士課程の学生が開くリサイタルというわけである。

アップされていたのは、ブルーノ・マントヴァーニ Bruno Mantovaniの「燃えるような霧雨 L'incandescence de la Bruine」と、ルチアーノ・ベリオの「セクエンツァIXb」「セクエンツァVIIb」。このマントヴァーニ作品、流行ってますね。一度、ミーハ・ロギーナ氏の演奏で聴いてみたいなあと思っているのだが。

・マントヴァーニ「燃えるような霧雨」


その他の曲については、以下のリンクから辿っていただきたい。上に載せたマントヴァーニの演奏も素晴らしいのだが、個人的に「セクエンツァIXb」がかなりの聴きものだと感じた!なぜか良く分からないけど、すごく惹き付けられる演奏だ。

ベリオ「セクエンツァVIIb」
ベリオ「セクエンツァIXb」前半
ベリオ「セクエンツァIXb」後半←音ズレが残念

2009/02/17

塙美里さんのリサイタルチラシ












以前にもご案内した塙美里さんのリサイタルだが、チラシを送っていただいた(送っていただいたのはけっこう前だけど)ので、貼り付けておく。クリックして拡大できる。なんとか上手く予定を合わせて伺えそうで、良かった。

ちなみに、月刊ぷらざでも取り上げられたそうである。…あ、県央版か。県南版だったら、ポストに投函されているのだが、そうかなるほど。

【塙美里サクソフォンリサイタル Misato Hanawa Saxophone Recital vol.1】
出演:塙美里、原博巳(sax)、服部真由子(pf.)
日時:2009年3月22日(日)16:30開演
会場:水戸芸術館コンサートホールATM
料金:前売り1500円 当日2000円
プログラム:
C.フランク/塙美里 - ヴァイオリンソナタ
C.ドビュッシー - ラプソディ
J.B.サンジュレー - デュオ・コンチェルタント 
M.ブルッフ/塙美里 - コル・ニドライ 他
主催:財団法人水戸市芸術振興財団
問い合わせ:
029-227-8118(水戸芸術館コンサートホールATM)
misatosax@hotmail.co.jp(塙美里)
チケット:
水戸芸術館エントランスホール・チケットカウンター
水戸芸術館チケット予約センター(029-226-0351)
ヤマハミュージック関東(029-224-2861)

2009/02/16

デュオ服部「Embraceable You」

このCD、服部先生のサインがあるから、直接売っていただいたやつだな。私が大学2年のとき、服部先生につくば市まで来ていただいて、デザンクロ「四重奏曲」第3楽章のレッスンをお願いしたときだったと思う。そういえば、お昼時には車に乗せてもらって「かるがん」までラーメンを食べに行ったんだっけな。懐かしいな。…なんてことを思っていたら、そのときの様子が日記に書いてあった(こちら)。モーリスやらパスカルやらが、ものすごい美しくダイナミックな音楽で練習場所に響いていた。

個人的な感慨はともかく、そのCDというのが奥様の服部真理子さん、そしてファブリス・モレティ氏が参加したアルバム「Embraceable You」である。出版元のモモンガレコードというのは、確かサクソフォン奏者の高木玲氏が主催するレーベルで、ファブリス・モレティ氏やTetra SaxのCDなどもリリースしている。

Embraceable You(Momonga Records MRCP 1004)
服部吉之、服部真理子、ファブリス・モレティ

Claude Pascal - Sonatine
Raymond Gallois Montbrun - Six Pièces musicales d'étude
Paul Creston - Sonata op.19
生野裕久 - Variations sur le thème de "Embraceable You"
Jindřich Feld - Sonate

こういったCDを聴くと、サクソフォンとピアノのCDというのが「室内楽」の演奏であるんだな、ということを再確認する。ここで繰り広げられているのは、フレージングやバランスの点においてもまさに2つの楽器による神妙なアンサンブルそのものであり、どちらが欠けても演奏は成立しないのだと思う。

まず、パスカル「ソナチネ」と生野裕久「Embraceable You」を挙げたい。「ソナチネ」の演奏は、フランスでのモレティ氏とのジョイントコンサートの際に、臨席した作曲者から大絶賛を受けたということだ。(個人的に)いまいち掴みどころのないこの曲だが、この演奏と対抗できるとしたらダニエル・デファイエの演奏くらいかもしれない。そのくらい確信に満ちていて、どこを切り取っても「合点!」と叫びたくなるような演奏。

がらっと雰囲気を変えた「Embraceable You」では、これは本当に隅々まで幸福感に満ち溢れていて、聴いていて鳥肌モノ。音色や技巧でゾクっとくることはあるかも知れないけれど、まさか演奏の楽しさで「わーーっ」という感じになるなんて、サックスのCDでは考えられないことだ。これは、生野裕久氏によるアレンジの良さにも起因していることだと思う。最終部に向けてぐっと盛り上がって、最後に冒頭と同じ変奏が形を変えて演奏されるのだ。ニクイ。

しかし、やはり特筆すべきはフェルドの「ソナタ」であろう。ユージン・ルソー氏、ケネス・チェ氏も演奏しており、一般的にはそちらの演奏のほうが高い?のかな?よくわかんないけど。だが、私が一番好きなのはこのCDの演奏。曲の由来からしても、あまりにあっさりした演奏ではどうかと…。初めて聴いたときの衝撃といったらなかったし、驚異的なテンションと集中力、そして安定さと不安定さの境目を猛スピードで駆け抜けるようなスリリングさがたまらない。

ライナーノートは上田卓氏によるもの。短いながらも魅惑がぎゅっと凝縮された解説で、真似できないなあ…。ちなみに版元では絶版、店頭在庫しかないそうで、もしお店で見かけたら即購入をオススメ。

2009/02/15

Saxophone Masterpieces

ユージン・ルソー Eugene Rousseau氏がRIAXレーベルに吹き込んだ4枚のアルバムは、いずれもクオリティが高く、万人にお勧めできる内容である。発売からかなり時間が経過しており、いまさら…な感もあるが、「Saxophone Masterpieces」を聴きなおしてみた。RIAXが取り扱うクラシック・アルバムの、記念すべき最初のカタログ番号を飾ったのが、このルソー氏のアルバムである。クレストン、ムチンスキー、ハイデンといったアメリカの作曲家の作品と、チェコの作曲家であるミロスラフ・カベラックの作品が収録されている。

Saxophone Masterpieces(RIAX RICA-1001)
Eugene Rousseau, saxophone
Jeromír Klepác, piano

Paul Creston - Sonata op.19
Robert Muczynsky - Sonata op.29
Bernhard Heiden - Sonata
Miloslav Kabelác - Suita
Bernhard Heiden - Fantasia Concertante

発売されたのは2000年だが、レコーディング自体は1992年の10月だということだ。ロケーションは、プラハの放送局のスタジオ。どうもリリースに至るまでの経緯が良く分からないのだが、録音はしたものの、発売のアテが見つからずテープがお蔵入りになっていたところを、プロデューサーが引っ張り出してきた…というところだろうか。RIAXのHideki Isodaって、何者?

演奏は、どの曲も模範たりえるもので、必要以上に飾らないニュートラルな音楽作りは、なんだかフルモー氏の演奏を思い起こさせる。また、弟子であるケネス・チェ氏やオーティス・マーフィ氏の演奏にも、多くの共通部分を見出すことができる。

特にムチンスキー、ハイデンは、この版こそが決定版である、と言い切ってしまえる位のものだ。ムチンスキーでは、第2楽章序盤ではテクニカルな面をことさらに強調しすぎず、隅々まで良く歌いこんだ演奏。しかし最終部に向けて、不思議と聴き手の耳を惹き付けていく。ルソー氏と親交が深いハイデン氏の作品は、アルト・サクソフォンのための名作「ソナタ」、そして本来であれば吹奏楽編成が想定される、「ファンタジア・コンチェルタンテ」の収録も嬉しい。ルソー氏が川崎のコングレスで同曲を取り上げたのが1988年だから、この録音はその4年後。吹奏楽版にはない、コンパクトさは、これはこれで面白い演奏だ。

録音は、ずいぶんと解像度が低いように聴こえるが、まあそもそもレコーディングもどういった環境であったかわからないのだし、これはこれでしょうがないのかもしれない。ピアノなど、サクソフォン以上にボヤけて聴こえるため、特に歯車のようなアンサンブルが繰り広げられている(であろう)部分では、いまいちその絡みがわからないのが残念。

2009/02/14

刷り込み

曲名を聴いた時にとっさに思い出す演奏って、ほとんどが高校の時に聴いたCDの演奏であることが多い。その頃は手持ちのCDも少なかったし、スタンダードな作品はその頃に聴きまくっていたからだと思う。

面白いな、と思うのは、あとから別のCDを入手してそちらの演奏を「こっちのほうが良いな」と思っても、時間がたつにつれて、再び一度刷り込まれた演奏のほうを聴きたくなる、ということ。

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ピエルネ、デザンクロ、リヴィエ、シュミットの四重奏曲→3枚組のアルバム「サクソフォーンの芸術」でのデファイエQの演奏が完璧に刷り込まれている。たぶん、やろうと思えば最初から最後まで脳内再生できる。

デザンクロ「PCF」→けっこう昔からロンデックスの演奏をMDで持っていて、その録音で覚えた。なんでこの曲だけ持っていたんだろ…。後から好きになった録音も多いが、今だに私の中ではこのロンデックスの演奏がスタンダード。

クレストン「ソナタ」、モーリス「プロヴァンスの風景」、ボザ「カプリス」、バッハ「ソナタ第6番」、ランティエ「ユースカルデュナーク」、イベール「コンチェルティーノ」→ミュールの「La Legende」での演奏が刷り込まれている。例えばクレストンなんか、ユージン・ルソー、林田和之さん、服部吉之先生などの演奏も好きだが、やっぱり戻ってくるのはミュールだ。

パスカル「四重奏曲」、フランセ「小四重奏曲」→トルヴェール・クヮルテット「マルセル・ミュールに捧ぐ」。なんせ、一番最初に買ったサックスのアルバムですから…。本当に、この2曲ばっかり聴いていた。実際、フランセなんてかなり完成度が高いと思う。

リュエフ「四重奏のためのコンセール」→これは、デファイエQでしょう。それまでトルヴェールの演奏でも聴いたはずだが、そちらはあまり印象に残っていない。

ドビュッシー「ラプソディ」→ロンデックスが、マルティノン指揮ORTF。これもかなり聴いた。一年ほど前にデファイエの参加したLPを入手して、そちらも良く聴いているのだが、頭に思い浮かんでくるのはこちら。

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うーん、こうして並べてみると、スタンダードな曲のほとんどをミュール、デファイエ、ロンデックス等の演奏で触れてきたことがわかる。21世紀になってクラシックサックスを聴き始めた人の刷り込みがこんな状態だなんて、ある意味では幸いなことなのかも。kuriの音楽鑑賞脳の半分は、ミュール、デファイエ、ロンデックスでできています、みたいな(笑)。

2009/02/13

マスランカ「レシテーション・ブック」内のメロディ(続き)

3月の演奏会に向けて、ディヴィッド・マスランカ「レシテーション・ブック」を練習している。ここをお読みのほとんどの方は、雲井雅人サックス四重奏団のCDでお馴染みだとは思うが、全5楽章からなるサクソフォン四重奏の傑作である。同曲は、賛美歌やグレゴリオ聖歌、マドリガルといったところに題材を求め、サクソフォンというフォーマットに最適な形で響きを再構築した作品とも言えるだろうが、題材となった曲が何だったのか、ということについて、少し追ってみたい。

第2楽章と第5楽章については、およそ一年前に調べてある(こちらからどうぞ)ので、今回は第1楽章、第3楽章、第4楽章について調べてみた。

第1楽章「コラール旋律"三つにして一つなる汝"による瞑想曲」は、ソプラノサクソフォンの単旋律から始まり、その後は予想だにしない驚異的な展開によって全曲の幕を開ける。この楽章は、おそらくバッハのカンタータBWV293である"Der du bist drei in Einigkeit"を題材としたものだと思う。調号はおなじ。元となった旋律は作曲者不詳のようで、もしかしたらバッハのオリジナルの旋律なのかもしれない。

第2楽章や第5楽章の賛美歌のメロディは、様々なカンタータで何度も引用されているが、第1楽章のこのメロディは、どうやらこのBWV293にしか出てこないようだ。やっつけ仕事ではあるが、バッハのコラールBWV293を、サクソフォン四重奏に移調してみた(クリックして楽譜を拡大、少し修正しました)。単旋律で聴いた際に思い浮かべるコード進行よりも、意外と複雑な響きがするものだなあと感じた。また、すぐに音で聴いてみたい方のために、カンタータBWV293のmidiデータへのリンクを張っておく(こちら)。

第3楽章「ここで死にゆく!」は、カルロ・ジェズアルド Carlo Gesualdo di Venosa(1561? - 1613)の作曲による、有名なマドリガル集のうちの一曲、"8つのマドリガル集"の第4巻に所収された「Ecco, morirò dunque」をそのまま置き換えたものである。もともとは5つの声部からなる作品だが、もちろん「レシテーション・ブック」では4つの声部に再構成されている。また、アーティキュレーションに大幅な変更が加えられている。それから、調号が変化し、原曲から1.5音下げられている。

もともとの楽譜のPDFファイルは、このリンク先から参照可能(Werner Ickingのウェブサイト)。前半と後半に分かれたうち、前半部分のみが取り上げられていることがわかる。

第4楽章「グレゴリオ聖歌"おお、救い主なるいけにえよ"による瞑想曲」は…かなり調べたのだが、どうしてもわからなかった!!多くの作曲家が、同一タイトル「O Salutaris Hostia」で聖歌を作曲しており、マスランカ氏がそのうちどれを題材としたのか、調べきれなかったのだ。

これはどうやら、マスランカさんに訊いてみるしかないかも…。それか、どなたか知っている方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示願います。グレゴリオ聖歌を聴きまくれば、探し当てられるのかしらん。

Gubaidulina's Duo Sonata on YouTube

バリトンサクソフォンのデュオ、ということで筆頭に挙がってくる、ソフィア・グバイドゥーリナ Sofia Gubaidulinaの「デュオ・ソナタ」だが、その演奏動画がYouTubeにアップロードされていた。たしか2本のバスーンのためのソナタからの改作とのことだが、随所に美しい響きが聴かれる作品で、かなりの傑作と言えるのではないだろうか。ドゥラングル教授とDamien Royannaisの録音が有名。

この動画での演奏は、アウレリア・サクソフォン四重奏団のソプラノサクソフォン奏者、Johan van der Lindenだ。もう一人のSimon Brewっていうのは、誰だろう。

2009/02/12

Celebrating the Saxophone

専攻同期で集まる立食パーティと、研究室の飲み会をはしご。どっちも楽しかったー。なんだか、修士論文の審査が終わってから、遊ぶか飲むかしかしていないような気がするぞ。

で、帰ってきてブログを書きながら、クリュイタンス×ソシエテの演奏を聴いているところ。木下直人さんにトランスファーしていただいたもの。「ラ・ヴァルス」、脳をベルベットで撫でるような、この演奏・音色はどうだ!

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ヤフオクで落札した書籍。amazon.com等を始め、中古はかなり出ているようだが、送料込みで1200円程度だったら比較的安いもんだろう。Paul Lindemeyer著「Celebrating the Saxophone」は、主にジャズ・サクソフォンの歴史を、写真を使って辿っていくという内容の本である。フルカラー、A4変形版(かな?)で全96ページ。裏表紙を見てみたら、おおお、インゴルフ・ダール研究の第一人者としても有名なサクソフォン奏者、ポール・コーエン Paul Cohenの推薦文があるではないですか。驚き。

この本の何が面白いって、まだクラシックとジャズの境界線がぼやけていたころの、サクソフォンの歴史を貴重な写真資料で振り返ることができること。アントワーヌ=ジョゼフ(アドルフ)・サックスが発明したサクソフォンがアメリカにわたった後、ポピュラーミュージックの潮流の中に巻き込まれていくその過程に関わった著名なプレイヤーたち…ルディ・ヴィードーフ(ウィードフト)、シックス・ブラウン・ブラザーズ、ジミー・ドーシー。そして、ギルモアバンドやスーザバンドで活躍した名手たち…エドワード・ルフェーブル、ベネ・ヘントン。彼らにまつわる事柄が、写真つき絵本のように幅広く述べられており、さらにフルカラーの大きな写真が随所に貼り込まれていて、読んでいて実に楽しい!

後半も、ジャズの大御所と呼ばれるプレイヤーたち…シドニー・ベシェから始まり、チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーンを経てディヴィッド・サンボーンまでを、豊富な写真資料で一気に辿っている。いくらクラシックが専門とは言え、このくらいは知っていて、なおかつ音を聴いたことがあるよ、と言えないと恥ずかしいくらいのものだ。クラシックの奏者に関しても、ちゃんとわずかながら触れられているのが嬉しい。エリザ・ホール、マルセル・ミュール、シガード・ラッシャー、セシル・リースン…。

サクソフォンを吹いているのであれば、これは手元に置いても良いだろう。楽器そのものの写真も豊富に用意されており…おお、クランポンのエヴェット=シェイファーのコントラバスサックスなんて、初めて写真で見たかも。ローランド・カークが使っていたフシギ楽器も、こうしてまじまじと見ると印象が変わる。

日本て、書籍が少ないですよね。こういった書籍の資料に関しては国内には見切りを付けていて、海外で発売されているものを積極的に取り寄せていこうかと思っている。ぼちぼち楽譜と書籍が同じくらいの厚さになりそうだなー。

2009/02/11

スキーから帰ってきたー

2泊3日のスキー旅行@野沢温泉から帰ってきた。楽しかった!

最後にスキーに行ったのは、たぶん中学3年とか高校1年の頃であったはずで、今回は8年ぶりに滑ったことになる。意外と身体は覚えているもので、10分くらい滑ったら、感覚を思い出してきた。体力が落ちているせいか、昔と違って、無理はできないけどね…(笑)。

〇日目:
代々木に集合した後、車中泊。野沢温泉村へ出発。

一日目:
早朝着。仮眠を取った後、朝からゲレンデへ。天気は曇りで、少し寒い。足慣らしにと、みんなでゲレンデを滑る。気持ちいい!スキーが初めてだという子に少し教えたりしながら、一つのコースを重点的にグルグルと。
午後は、林間コースを滑ったり、山頂付近のコースを滑ったりと、行動範囲を広げた。最後の〆にと挑戦したチャレンジコースで撃沈。心が折れた。
夜は宿での夕食の後、温泉へ。13ヶ所に点在するという温泉は、すべて源泉が違うそうだ。一番大きいと思われる温泉に出かけるも、(いろんな意味で)大変な衝撃を受けた。

二日目:
朝から曇り。午前中はゆったりとしたコースを攻め、それぞれ自由行動となったときに、尾根を何kmも駆け抜けるコースへ。上から下まで20~30分はかかる。ずっと曇りだったのだが、ほんの5分だけ太陽が覗いて、そのときの景色が、実に美しかった。午後は、皆で尾根のコースへ。終了間際に吹雪となり、連絡コースを使用したところ、あまりに平地が多すぎて、心が折れた。
夜は、鶏鍋。お腹いっぱい。温泉は、一日目とは違うところへ。

三日目:
気持ちの良い晴れ!山頂付近を中心に攻めながら、雪質を楽しんだ。野沢温泉スキー場は、広いけれどコース一つ一つが長いので、何グループかに分かれて行動していても、すぐ他のグループと会えるという安心感がある。滑り納めは、尾根から谷へ抜けるコース。太陽の下、あまりに気持ちよすぎて、友人と2人で大声を出しながら滑る。爽快きわまりない!!
午後は温泉へ。足湯とか。16:30に現地を出発し、つくばへの到着は22時半くらいだった。

レンタルのスキーです。やっぱ今はボーダーが多いのだなあ。今回一緒に行った9人のうち、6人はスノーボードだったし、宿の乾燥室もスキーはわずかだったし、ゲレンデももちろんボーダーのほうが多かった。







山頂からの眺め。滑走しながら、こんな景色が目の前に広がるのだ!気持ち良くないはずがない!






足湯。温泉も、いろいろカルチャーショックではあったけど、身体も温まったし良かったなあ。スキーと温泉のコンビは、まさしく最高でした。

2009/02/10

スキー中

(携帯から更新)

友人9人と野沢温泉でスキー中です!

スキーをしたのは8年ぶりだが、頭では忘れても体は覚えているもので、昔くらいの感覚で滑れている。野沢はたぶん初めてなのだけど、コースひとつひとつが長くて楽しい!今日は尾根を伝うコースを滑ったのだが、ほんの一時、雲の切れ目から日が差して、それがすごく綺麗だったなあ。

あ。NBSスペシャルのCMのBGMがナイマンの「羊飼いに任せとけ」だ。びっくりした。

2009/02/08

スキーに

野沢温泉へスキーに行ってきます。帰筑予定は2/11深夜。

ブログの更新&コメント返信は厳しいかなあ(笑)。携帯はつながります。Yahoo!メールはたまに見ます。ツイッターやミクシは見ないです。

ではー。

グラズノフのカリーナ・ラッシャー監修版がリリース?

まだ単なる噂であり、裏付けを取れていないのだが:

たびたびこのブログでも取り上げた通り、アレクサンドル・グラズノフ「サクソフォン協奏曲」の楽譜は、自筆譜とルデュックからの出版譜を比較すると、こまごまとした変更が加えられていることがわかる。変更を加えたのが連名となっているA.Petiotなのかどうなのか、そして変更を加えたその動機が何なのか、ということについては、未だ謎のままである。その謎を解く手がかりになるだろうということで、私自身も自筆譜の探索を進めたりしていたのだが、どうやらその必要がなくなりそうだ。

噂では(あくまでウワサ)、献呈者シガード・ラッシャーの娘であるカリーナ・ラッシャーの監修によるグラズノフの楽譜が出版されるとのこと。父であるシガードからの教えや自筆譜の情報を元に、アーティキュレーションやリズム等の見直しを行うほか、ラッシャー版のカデンツァ等を収録する…というようなものになるそうだ(しつこいけど、ただのウワサ)。

そんなのが出るのか!!ウワサがウワサでなことを祈りたい。…もし出なかったら、これはまた自筆譜の探索を始めないと…。イベールやグラズノフの協奏曲は、最も重要なレパートリーとされている割には、謎な部分が多い。その謎を、放っといていいということはないはずだ。

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Bärenreiter社からの出版が予定されているそうだ。

友人の披露宴

吹奏楽団ご用達の居酒屋で披露宴が執り行われた。ちょっと特殊な空間。だが、その馴染み深さが良い。

言葉では表しがたい、なにかを感じた。お二人ともすごく幸せそうで、その雰囲気が周りを巻き込んで笑顔にしていく、というようなそんな場を垣間見た気がした。いくら言葉を並べてみても、そんなものは片っ端から蒸発していくような、そんな雰囲気だった。ただ、これだけ言えるのは…愛ってすごいなあ。人間てすごいなあ、ということ。

そして改めて、ご結婚おめでとうございます!!どうぞ末永くお幸せに…。

2009/02/07

雲井雅人SaxQ「むかしの歌」

これ、いいなあ。まさに"愛奏曲集"という趣の、雲井雅人サックス四重奏団の最新アルバムである。「最新」とはいっても、発売からもうずいぶんと経ってしまった。昨年12月の演奏会にも伺えず、ご紹介のタイミングを少々逃していたところだった。年末年始に実家に持って帰って、かなり聴いていたのだが、なんでブログに書かなかったのだろう。不思議…。

むかしの歌~Chanson d'AutreFois~(Cafua CACG-0127)
雲井雅人、佐藤渉、林田和之、西尾貴浩
プログラム:
G.ピエルネ/M.ミュール - 昔の歌
富山県民謡/秋透 - 三つの富山県民謡(おわら節、こきりこ節、麦屋節)
櫛田[月失]之扶 - 万葉
伊藤康英 - 琉球幻想曲
イギリス民謡/織田英子 - グリーンスリーヴス
P.イトゥラルデ - ギリシャ組曲
I.アルベニス/M.ミュール - コルドバ
G.ピエルネ - 民謡風ロンドの主題による序奏と変奏
村松崇継/浅利真 - 彼方の光

こういう時代にあって、ミュール編の小品や、グリーンスリーヴスといった曲をCDとしてリリースし、さらにこういった聴きごたえのするアルバムになるのって、雲井Qくらいなのではないかな。昔からどうもサックスで取り上げる「メロディ集」「小品集」というやつが苦手であった。密度という点で、なんだか薄いイメージをもってしまうのだ。サクソフォンって、4本持ってきて音を重ねればそれっぽい響きにあっさり溺れてしまうものだから、深い音楽を感じられるものがなかなか少ないのだよなあ。

ここで聴ける演奏は、そういった軽薄さとは無縁のものだった。一見すると聴きやすいものだが、集中して聴けば聴くほどに、味わいが増す。かといって、コッテリした演奏・聴いて疲れる演奏であるということではないのが、驚くべきところ。この絶妙なバランス感覚の実現には、とんでもない演奏レベルが要求されるのだと思う。

前半は、日本のメロディに題材をとったもの。後半は、西洋のメロディに題材をとったものという構造。そして、プレリュードとエンディングにそれぞれをひっくり返した小品を配置するというアイデアが面白いな。接続箇所におかれたのが、これまた東と西を横断する梯となる「琉球幻想曲」と「グリーンスリーヴス」、というのも(笑)。

録音として聴きたかった「三つの富山県民謡」が収録されているのが嬉しかった。かなり技巧的に工夫の凝らされた編曲で、オリジナルのしみじみさ…とは少し離れているのだが、実に面白いのだ!このCDを実家の居間で聴いていた時、母がこのCDの「三つの富山県民謡」に合わせてメロディを口ずさみ始めたのだが、そのことが妙に印象に残っている。あとは、「万葉」「琉球幻想曲」が好き。素材となっているのは、日本の音だが、どちらもその素材を存分に生かし、高度なパロディを構築しているのは周知の通り。その楽譜に、心から共感して演奏している雲井雅人サックス四重奏団の様子が、スピーカーを通して伝わってくるようだ。

ふと思ったのだが、そういえばこれってサックスのアルバムなんですよね。面白いなあ。まさか、おわら節やこきりこ節を唄い始めた人は、サックスという楽器が、このような音を奏でるとか、思いもしなかったのだろうなあ。

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今度はどんなアルバムを作ってくれるのだろうか。ずっと心待ちにしているのが、J.S.バッハ/伊藤康英編「シャコンヌ」なのだが、いつCDになるのかなー。スティラーの「Two Fixed Forms Unfixed」はどうなったのかな。次の演奏会も、いつになるのだろうか。はてさて…。

2009/02/06

練習再開

修士論文の審査も終わったということで(まあまだ研究室の引継ぎとか残ってはいるが)、空いた時間を利用して演奏会の曲をさらっている。Tsukuba Saxophone Quartetの3/14の演奏会は、以前取り上げた曲を2曲ほど取り上げるので、まずはそれのさらいなおし。音運びは忘れていても、指のほうは覚えているもので、思ったより練習が早く進んでいる。

現在のところ、ほぼ確定しているプログラムは、
P.クレストン「ソナタ」
G.ロッシーニ「デュオ」
M.ブンス「ウォーターウィングス」
F.フェラン「ソナティナ"パールサックス"」
A.マルチェロ「協奏曲(フルート独奏:渡瀬英彦)」
D.マスランカ「レシテーション・ブック」

というところ。これに、楽譜やエレクトロニクスパートや演奏時間の問題で、あといくつかの曲が追加…されたりされなかったりする予定(「Vertical Study Time II」、「Buleria」、「Four 5」、「Tread on the Trail」あたり)。なんだか独奏が多いが、まあいつものことだ。曲想がばらついてしまったのは、今回はしょうがないと言えばしょうがない。準備期間も取れなかったし。

あー、アンコールもどうしようかなあ。そして…あああ、「ウォーターウィングス」のための、オーディオインタフェース買わないと(出費が…泣)。

個人的には、コンスタントに、一日2時間~3時間くらいは吹けるといいな。と言いつつも、日曜日の夜からは長野へスキー旅行に行ってくるけど。そちらはそちらで、たのしみー(^∀^)ノ

2009/02/05

修士論文審査

私の専門はコンピュータサイエンスで、それに関する論文の執筆と発表、単位の取得により、修士を得ることができるということになる。今日は自分の大学院卒業のための審査だった。おそらく、大丈夫だろう…。

これにて、小学校から続いてきた計18年間の勉強が終了となる。感慨深いことだ。これまで学業と課外活動を多くの面から支えてくださった両親に、まずは感謝したい。

2009/02/04

祝!

大学の吹奏楽団の同期の友人が、本日入籍したとのこと。結婚すると、家庭とかそんなちっぽけなものではなく、"小宇宙"が生まれる、と言ったのは誰だったっけ。本当に見ていて幸せそうで、結婚て凄いことなんだなあと思った。

おめでとうございます!

ぱぱぱぱーーん、ぱぱぱぱーーん、ぱぱぱぱん、ぱぱぱぱん…(結婚行進曲のつもり)

木下直人さんから(デファイエとロンデックスのCrest盤)

すでに頂戴していた2枚だが、今回の復刻完了にともない決定版として送っていただいた(ありがとうございます!)。Crestレーベルに吹き込まれた「Recital Series」と呼ばれる企画物のLPのうちの2枚。ここに復刻された2枚のCD-Rこそが、世界最高"レベル"どころではなく、これは間違いなく世界最高の復刻である。マスターテープは散逸してしまったという話なので、オリジナルを復刻することは不可能なのである。

「Daniel Deffayet Saxophone(Crest RE-7051)」
Daniel Deffayet ダニエル・デファイエ(sax)
Zita Carno ジータ・カルノ(pf.)
曲目:
R.Gallois-Montbrun - Six pieces musicales d'etudes
R.Boutry - Divertimento
C.Pascal - Sonatine
J.Rueff - Sonate seul

「Jean-Marie Londeix(Golden Crest RE-7066)」
Jean-Marie Londeix ジャン=マリー・ロンデックス(sax)
Anne-Marie SCHIELIN アンネ=マリー・シェリン(piano)
曲目:
C.Delvincourt - Croquembouches
A.Desenclos - Prelude, cadence et finale
L.Robert - Cadenza
D.Milhaud - Scaramouche
I.Markovitch - Complainte et danse

単に資料的価値に留まらず、演奏内容も素晴らしいものだ。デファイエとロンデックス、演奏家としての最盛期における、それぞれがそれぞれの十八番を取り上た渾身の一番といった感じで、甲乙付けがたい。現代では、この2枚を両方きちんと聴いたことがないサックス吹きって、けっこう多いんだろうなあ。実にもったいないことだ。サックスをやっているなら、つべこべ言わずにこの2枚を聴かなければ。

それぞれから一曲ずつ取り上げるなら…。

デファイエ演奏のブートリー「ディヴェルティメント」。こちらのページでは、DONAXさんによる「ディヴェルティメント」の描写が読めるが、とにかく考えられないほどの美しいリズムと響きを聴くことができる。一度聴いただけで、頭から離れなくなってしまう音楽だ。他の演奏者による「ディヴェルティメント」とは、雲泥の差だ…。デファイエは、第1回のワールドサクソフォンコングレスでも同曲を取り上げており、満を持してのレコーディングといったところだろう。

ロンデックス演奏のロベール「カデンツァ」。ロンデックスの演奏は、様々なところに残されているが、この演奏はその中でも集中力という点で最高峰に位置するもの。ロンデックスの演奏は、リズム処理が比較的甘いことが多いのだが、このLPの、特に「カデンツァ」での演奏はそんなことを微塵も感じさせない完成度。若さから来る天才的な閃きと、大御所としての風格を獲得しつつある部分が同居した、最高の演奏。

改めて聴いてみたが、やっぱりこの2枚は「サックスのレコード」という枠では、括ることができなさそうだ。

ジャケットの縮小コピーも、一緒に送っていただいた!

2009/02/03

藝大院の学位審査会

「平成20年度東京藝術大学大学院音楽研究科(修士課程)学位審査会公開演奏会」の最終日、管打楽器のセクションのうち、サクソフォンの演奏者は3名、10:00より30分ずつの持ち時間で各人が2曲を披露した。公開審査ということだったが、ぱっと見50人以上の聴衆が集まっていた。関係者が多かったかな?客席後方には、おそらく管楽器科の教授陣・講師陣である先生方が着席し、審査を行っていた。

石橋梓
E.デニゾフ - ソナタ
J.イベール - コンチェルティーノ(1920年代のアドルフ・サックス社製楽器を使用)

ピアノは羽石道代さん。デニゾフは、とてもスタイリッシュな演奏だった。ピアノとのアンサンブルの面でもかなり精度が高く、とても楽しめた。大好きな曲だが、実演を聴くたびにはっとさせられるなあ。こういう音楽を、いったいどのように着想するのだろうか。
イベールは、遠目で見ても非常に状態の良い古楽器を使用して演奏された。デニゾフと比較して、ヴィブラートを深めにして演奏しているように聴こえた。音色は、確かに現代の楽器とはかなり違うもの。演奏はどうなることかと思ったが、コントロールや音程の破綻は殆どなく、純粋に音色の美しさとイベール独特の軽やかさに酔いしれた。あわよくば、マウスピースやピアノも当時のものを使用したら面白かったかもしれない。

田村哲
D.ベダール - ファンタジー
M.ナイマン - 蜜蜂が踊る場所(マリンバ2台版)

ナイマンが素晴らしかった。およそ17分(スコアは30ページ!)に及ぶ大作だが、最後まで独奏、マリンバともに驚異的な集中力を維持していた。特に最後のコーダ部では、敷き詰められる大量の音符に、聴いているこちらが息をするのを忘れるほどであった。こりゃすごいや。
マリンバの素朴な音色の上で軽々と歌うサクソフォンは、さながらバレエのような情景を想起させる…っていうか、もともとバレエ音楽が基になっているんだっけ。同曲のマリンバ2台への編曲版(オリジナルではない)は、まだほとんど演奏されていないということだが、オーケストラ版の実演機会がないなかで、この名曲が広まるきっかけになってくれれば良いな、とも思った。
ベダールは、ソプラノサクソフォンの実演では今まで一回しか聴いたことがない曲だったが、すべての音域に渡る音色の美しさを堪能した。いかにもフランス産の一口菓子的なコンサート・ピースという趣で、もうちょっと重い曲(フィトキンの「Gate」とか)を聴いてみたかったなー、なんて。

伊藤あさぎ
野平一郎 - 舵手の書
A.カプレ - 伝説(室内オーケストラとの演奏)

「舵手の書」は、最近ドゥラングル教授のCDも発売されたばかりでかなり聴き込んでいるが、聴く度毎に新しい発見があり、素晴らしい名曲である。今日は、指定のメゾ=ソプラノではなく、ソプラノ歌手との演奏。サクソフォンの演奏(鬼気迫る!)が良かったのは言うまでもないが、デュエットのアンサンブルの妙を感じられたのも収穫だった。
カプレは…何よりもまず、今までこの曲ってサクソフォン協奏曲だと勘違いしていたのだが、そうか、室内オーケストラの作品だったのか!舞台下手より、vn, vn, va, vc, cb, fg, sax, cl, obと並び、サクソフォンはその室内アンサンブルの一員として神妙なアンサンブルを繰り広げていた(と言っても、こういう並びの中だと、やはりサクソフォンという楽器の雄弁さを再認識するのだが)。サクソフォンの他で印象に残ったのは:クラリネットの方がかなり上手かった。弦楽器の方は、トップの方は以前佐藤淳一さんの博士リサイタルで演奏しているところをお見かけしたような。コントラバスの音が、なんか妙にジャズっぽく聞こえて面白かった。…といったところ。

2009/02/02

UTSBアンサンブルコンサート2009

取り急ぎ、自分が参加した演奏の記録をリストアップしておく。感想等は後日。今年は珍しく、小編成のアンサンブルには参加しなかったな。

ビッグバンドで…(今年で6年目になるのか)
G.ガーシュウィン - 魅惑のリズム
C.コリア - ラ・フィエスタ

吹奏楽で…
小島里美編 - 童謡メドレー
J.ヴァン=デル=ロースト - カンタベリー・コラール
A.リード - アルメニアン・ダンスより"ロリの歌"
伊藤康英 - 吹奏楽のための祝祭曲"集え、祝え、歌え"
P.スパーク - ジュビリー序曲
福島弘和 - 稲穂の波
伊藤康英 - 舞子スプリングマーチ

2009/02/01

木下直人さんから(クリュイタンスのラヴェル全集)

アンドレ・クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団のコンビによるラヴェルの管弦楽作品全集(EMI)は、他を寄せ付けない圧倒的名演奏として、現在まで語り継がれている録音である。現在でもCDで入手可能であり(amazonへのリンク)、私もボレロやスペイン狂詩曲が入った盤は所持している。他の録音では聴けない圧倒的に煌びやかな音色、今では名実ともに失われてしまったパリ音楽院管弦楽団の、栄華の極み!その瞬間を捉えた録音だと言える。この演奏の前では、演奏技術的な問題などを気に留める暇もなく、ただただその音に身を委ねるのみである。そんなわけで、CDとして手に入りやすいこともあり、ラヴェル好きだったら一度は聴いておきたい音盤。

本全集は、まずはじめにイギリスのEMIにて「初版盤」がプレス&リリースされ、その後フランスEMI盤や国内盤が発売されていったという経緯があるそうだ。それぞれのプレスによる差異はかなりのものであり、その中でも初版の盤をめぐっては、オークションで時たま信じられないほどの高値がついているようだ(セットで数万円とか)。

今回、木下直人さんは、自身が所有するラヴェル全集の初版盤をトランスファーして送ってくださった(いつもありがとうございます!)。実は、購入されて以来全く針を通していなかったそうなのだが、復刻環境整備の完了に伴い、初めて再生を行ったそうだ。カートリッジを巡る試行錯誤や、装置のオーバーホールについては、多くの苦労話を聴かせてくださったのだが、今回のラヴェル全集の復刻は、まさに念願かなってのものとなったようだ。

そうそう、イギリス盤は、ボックスの表紙がこの青い踊り手(バレエ「ダフニスとクロエ」で使われた衣装)のジャケットなのだよな。バラ売りされたフランス盤は、たしか4人の踊り手がそれぞれ描かれているはずなのだが。このジャケット写真はインターネットから拾ってきたもので、左上に赤い「EMI」の刻印が見られる。送っていただいたジャケット写真の左上には、Columbiaのマークが刻印されていた(輸入盤だから、ということだろうか?)。全4枚で、収録曲は以下の通り。

Ravel Complete Orchestral Works (The Complete Orchestral Works of Maurice Ravel)
André Cluytens
Société des Concerts du Conservatoire

SAX 2476
Daphnis et Chloé - Ballet in one Act by Michel Fokine

SAX 2477
Boléro
Rapsodie espagnole
La valse

SAX 2478
Ma mère l'oye
Valses nobles et sentimentales

SAX 2479
Le tombeau de couperin
Menuet antique
Alborada del gracioso
Une barque sur l'ocean
Pavane pour une infante defunte

今日は一日、こればかり聴いて過ごしていたが、もう最高ですね!たぶん、一週間、二週間に渡ってこの4枚をずっと聴き続けたとしても飽きることはないだろう。この曲がこうだとか、あの曲がこうだとか、詳しく書くことすらはばかられる。ここに再現されているアトモスフェールを、ただただ享受するのみ。ちなみに、ボレロのサクソフォンはジャック・テリーとミシェル・ヌオーではないか、とのこと。確かに、ソプラノの音色はデファイエとはちょっと違うような感じがする。

そもそも、元の盤が近代クラシック音楽における最大の財産の一つなのである。そればかりか、木下さんがトランスファーしてくださったこのCD-Rは、盤がプレスされた当時の再生環境を最高の形で追い求めた結果だ。この4枚のCD-Rは、近代クラシック音楽の価値が凝縮され、21世紀という時代にそれが再現された、大変貴重なものなのである。

私のお知り合いで、興味がある方はメールをください(→kuri_saxo@yahoo.co.jp)。

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…それにしても、木下さんをはじめとする多くの方々から頂戴した数々の録音を引き継いでいけそうな人は誰かいないかな。こういった音楽に興味があって、もちろんそれだけではなく資料としてのアーカイヴの整理とデータ公開を積極的に行い、さらに次の世代に繋いでいってくれる人。そういった人が現れるまでは、このブログの更新を止めることはできない。

あと20年は待たないとダメだろうなあ。特に若い世代であるほど、近代フランス音楽の美意識を理解できるようになる土壌がないもんな。それにしても、自分がデファイエやミュールといったスタイルに取り憑かれたのは、いったいなぜだったのだろうか(取り憑かれたからこそ、このブログがあり、こういったご縁があるのだが…)。つくづく不思議なことだ。